2023年には、数々の話題作が公開された。
ディズニー100周年記念映画『ウィッシュ』、日本のみならず海外でも絶賛大ヒット中の『ゴジラ -1.0』、宮崎駿の(推定)引退作でありほぼ広告を行わないことで逆に話題となった『君たちはどう生きるか』などが代表的だろう。
そんな中で、一部の界隈で大きな話題となり、今後の映画界に悪影響を及ぼしかねないにも拘らず、小規模公開であったがためにほとんどの人から認識すらされていない問題作がひっそりと公開されていたのをご存知だろうか。
それこそが『プー あくまのくまさん』である。

作品について
映画としては別に見ても見なくても構わないレベルの作品である。
ムキムキのプーとピグレットが、やたら多彩な方法で金髪美女を殺戮して回るだけのB級ホラー映画だ。
見た人のほとんどは、内容ではなく衝撃的なビジュアルと「はちみつは、もう飽きた。」という微妙にセンスを感じるキャッチコピーに惹かれて怖いもの見たさで映画館に足を運んだはずだ。
何を隠そう、筆者もその一人である。
タイトルといいビジュアルといい、どう考えてもアウトだろうとしかおもえないのだが、実は法的にはセーフ判定なのである。
それこそがこの作品が生まれ、問題視されている理由である。
元ネタについて
順を追って説明しよう。
この映画の元ネタが、皆様ご存知『くまのプーさん』なのは一目瞭然であろう。
現代日本における『くまのプーさん』は、ほとんどの人からディズニーによるアニメーション作品として認識されているが、原作である『Winnie the Pooh』は1926年に発表された児童小説である。
実に100年近い歴史を持つ作品なのだ。
なぜセーフなのか?
そんな歴史ある作品だからこそ、決して逃れられない宿命がある。
著作権の保護期間切れである。
現在、原作の『Winnie the Pooh』はパブリックドメイン化しているため、こんな滅茶苦茶なホラー映画に改変しても法的には問題がないのだ。
法的に問題がないとはいえ歴史ある創作物を好き勝手に扱うことを問題視する声は後を絶たないが、この映画の制作陣は今後も『プー』の続編や他作品キャラのホラー映画化を行うことに意欲を見せている。
そして、実は今年1月1日にはあのミッキーマウスがパブリックドメイン化している。
『ミッキーマウスVSくまのプーさん』みたいなB級ホラー映画を見たくないと言えば嘘になるが、しかしこのような作品が増えることはモヤモヤする気持ちもある。
今後この作品がどのように扱われるのかは注目していきたい。
しかし断言できるのは、「カルトムービーとして燦然と輝く」ことは決してない。普通に面白くないもんこの映画。